「死、欲望、人形」(ピーター・ウェブ、ロバート・ショート著 相馬俊樹訳 国書刊行会)を読み始めました。本書は「評伝ハンス・ベルメール」と副題があって、ベルメールはドイツ出身の画家であり人形作家です。私はエロティックな人形を撮影した写真によってベルメールを知りました。世界の美術史からすると、どちらかと言えば異端のマニアックな世界を持つ独特な造形作家なのだろうと思いますが、シュルレアリスムの潮流の中で捉えられる作家と考えれば、彼の存在感が定まってきます。人形作家四谷シモンはベルメールの球体関節人形の影響で、退廃的な雰囲気に包まれた人形を制作していたことが明らかです。私は四谷シモンの個展にも足を運び、若い頃見たベルメールの人形写真との近似性を感じていました。どちらも立体作品とは言え、私には到底真似の出来ない世界観があり、それだけに惹かれてしまうのです。自分と一番遠いところにある世界、幻想的であり、時に眩惑的であるエロティシズムは、どのような道を辿って芸術作品になったのか、本書を紐解いていきたいと思います。「ベルメールのイメージは、他の芸術家がかたく閉じたまま開こうとしない扉をあけ広げてくれた。私はすでにエロティック・アートの研究に興味を抱いていたので、『エロティシズムの総体的な理解への鍵』としてベルメールの作品を評価するという企画案にただちに同意した。~略~ドイツでナチスによる迫害を被った悲劇の時代や、最初の妻の死や、パリのシュルレアリストたちと合流するために亡命したことを思いだすと、ベルメールは非常に感情的になった。自分の作品がポルノグラフィとして拒絶され、芸術としてはまだ受け入れられなかったフランスでの貧困時代について苦々しく語ったが、文化庁の大臣が回顧展にかかわったのは、自分に対するかつての評価を改めようとする試みだとして歓迎している。」(ピーター・ウェブ著)という文章が本書の「はじめに」で綴られていました。じっくり読んでいこうと思います。