「奇想の美術館」(アルベルト・マングェル著 野中邦子訳 白水社)を読み始めました。本書は「イメージを読み解く12章」というサブタイトルがあって、それぞれテーマや芸術家を12章に分けて取り上げています。先日まで読んでいたドイツ人芸術家ハンス・ベルメールも奇想の視点をもった人形作家・版画家とも言えるので、読書の流れとしては私にとって自然なのかなぁと思っています。本書は内容に入る前に「謝辞」という題名のある前置きがありました。「より広範な文化に通じていないため、私のあげる例は西洋美術に限られる。そのなかから、絵画、写真、彫刻、建築など、いくつかの作品を選びだした。私の心に強く訴えかけ、想像力を刺激したものばかりである。そのほかにも十ばかりの画像を選んだ。たまたま目についたもの、個人的な好みに合ったもの、面白い逸話に興味を引かれたものなどを並べてみた結果、この本ができあがった。~略~私にできる弁明といえば、美術のいかなる理論にも頼らず、自分の好奇心だけをよりどころにしたということのみである。」この文章が示すのは、美術鑑賞の一番基本とする第一印象の心に刺さった部分を大切にする真意です。そこには体系的な方法論も背景とする歴史的考察はありません。そうした知識は後追いで学んでいくものだという考えが私にもあります。私が展覧会で図録を買い求めるのは、自分の印象に残ったものがどんな背景を持っているのか、評論家や学者の考察を読んで、自らの印象と重ねていくためなのです。第一印象だけでは忘れてしまいがちで、そこに考察等の理論があると、より深く心に刻まれてゆくと私は思います。また芸術家の生い立ちや育った環境も知り得た上で、その作品を見直すと、制作の動機や潜んでいる謎の部分が解明されることがあります。私は読書家であると同時に創作活動をやっている者なので、自らの作品に転化できるものがないかを探っている節があります。私にとって読書は創作意欲を刺激するものでもあるのです。